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菊芋は糖尿病に効果があるか?

時々患者さんから、「糖尿病のために菊芋を食べています」といった声を耳にします。菊芋が糖尿病に効果があるのではないかという話は、以前からあります。私はかつて、健康雑誌『毎日ライフ』の「糖尿病でインスリン治療を受けていますが、菊芋の健康食品を飲んでも大丈夫ですか?」という問い合わせに回答を寄せたことがあります(2005年2月号)。

菊芋の学名はHelianthus tuberosus、英名はJerusalem artichokeです。名前に「芋」とついていますが、実際には芋ではなく、キク科の植物です。国立環境研究所の新入生物データベースによれば、菊芋は外来生物法で要注意外来生物に指定されています。菊芋は通常の芋と違ってデンプンが少なく、芋の代わりに食べれば、じゃがいもやさつまいもなどと比べ血糖値は上がらないでしょう。

菊芋にはイヌリンという炭水化物が含まれています。イヌリンは消化管で消化されないため血糖値が上昇しません。また、食物繊維として働き、血糖値の急上昇を抑える可能性があり、整腸作用もあります。ネット上では「天然のインスリン」と書かれていることもありますが、これはイヌリン(inulin)とインスリン(insulin)の綴りが似ているためと考えられます。イヌリンはインスリンとは異なり、血糖値を直接下げるわけではありません。

私が回答を寄せてから20年が経過したため、改めて菊芋について調べてみました。動物実験では、菊芋パウダーを10%含む食事を与えた高果糖食ラットで、糖尿病や脂肪肝の予防効果が確認されたという研究があります。この論文によれば、菊芋に含まれるフルクタン(オリゴフルクトースとイヌリン)は、血中中性脂肪や肝臓内中性脂肪を減少させるとされています。その他、イヌリンを与えた高脂肪食のマウスで腸内フローラが改善したとの研究もあります。

しかし、糖尿病の方が菊芋を食べて血糖値が改善したというランダム化比較試験は見つかりませんでした。唯一、菊芋1回の摂取で血糖値が下がるという研究がありましたが、効果を得るためには100gの菊芋を食べる必要があるとされています。イヌリン自体の糖尿病に対する効果を調べたシステマティックレビューでは、確かにイヌリンの摂取により空腹時血糖値やHbA1cが下がる結果が出ています。ただし、採用された研究のほとんどは、10gのイヌリンを8週間摂取したものでした。ネットで調べると、菊芋100g中の炭水化物は2.3g、その15%がイヌリンだと書かれています。したがって、菊芋100gに含まれるイヌリンは0.345gです。10gのイヌリンを摂取するためには、毎日約2898gの菊芋を食べる必要があります。

しばしば、「〇〇という食べ物は□□に良い」といった言葉を目にします。その理由として、「〇〇には△△という成分が含まれ、それが□□に効果をもたらすから」という説明がなされます。しかし、多くの場合、臨床研究に用いられた量に比べて実際に食べる食品中の成分量が少なく、〇〇を食べるだけでは、研究で見られたような効果が得られないことが多いのです。

参考文献
British Journal of Nutrition (2014), 112, 709–717 https://www.cambridge.org/core/journals/british-journal-of-nutrition/article/beneficial-effects-of-soluble-dietary-jerusalem-artichoke-helianthus-tuberosus-in-the-prevention-of-the-onset-of-type-2-diabetes-and-nonalcoholic-fatty-liver-disease-in-highfructose-dietfed-rats/F492363274F18232200BE63773BB8921
British Journal of Nutrition (2020), 123, 308–318 https://www.cambridge.org/core/journals/british-journal-of-nutrition/article/inulin-from-jerusalem-artichoke-tubers-alleviates-hyperglycaemia-in-highfatdietinduced-diabetes-mice-through-the-intestinal-microflora-improvement/8F416402E3F0F97AF710794CF59BF8F5
J.Clin.Biochem.Nutr. (2020), 66, 176-183 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32523243/