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- 2024.10.07
- CATEGORY先生のへや
今回接種が開始される新型コロナワクチンについて
10月より新型コロナワクチン接種が開始されます。今回は原則として65歳以上の方が公費助成の対象となり、伊勢崎市での接種費用は3000円です。心臓疾患や肺疾患など、新型コロナウイルス感染の重症化リスクが高い方は65歳未満でも接種対象となります。対象外の方は全額自己負担となり、当クリニックでの接種費用は16000円です。
接種可能なワクチンの種類
今回接種できる新型コロナワクチンは5種類あります。従来から使用されているファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンに加え、第一三共のmRNAワクチン、武田の蛋白組み換えワクチン、Meijiseikaファルマのレプコンワクチンがあります。各医療機関はこれらのワクチンから選択します。
mRNAワクチン
従来のmRNAワクチンは、新型コロナウイルスのスパイクタンパクをコードするmRNAを接種します。これが細胞内に取り込まれ、スパイクタンパクが生成され、抗原となって抗体が形成されます。この方法は、ウイルス遺伝子が判明すれば迅速にワクチンを製造でき、改変が容易である点がメリットです。しかし、発熱や局所の痛みといった副反応が出やすく、抗体価が比較的早く低下することが問題視されています。
蛋白組み換えワクチン
武田の蛋白組み換えワクチンは、ノババックス社が開発し、2022年4月に承認されました。このワクチンは、培養細胞にスパイクタンパクを生成させ、そのスパイクタンパクに免疫増強剤(アジュバント)を加えたものです。人の細胞にスパイクタンパクを生成させるのではなく、合成されたスパイクタンパクを接種します。同様の製造方法はB型肝炎ワクチンにも使われています。当クリニックではこの蛋白組み換えワクチンを選択しました。理由として、すでに多くの方がmRNAワクチンを接種したり感染したりしており、ある程度の免疫を持っているため、以前ほどの感染予防効果は必要ないと考えています。今後ワクチンに求められるのは、ブースター効果による重症化予防であり、蛋白組み換えワクチンでもこの効果は期待できると考えています。また、私個人としてmRNAワクチンを何度も体内に入れることに心理的抵抗があり、副反応が少ない可能性も考慮しました。
レプリコンワクチン
新たに使用可能となったのがレプリコンワクチンです。「レプリコン」は「自己増殖」を意味します。このワクチンにはスパイクタンパクだけでなく、レプリカーゼという酵素をコードしたmRNAも含まれています。ワクチン接種によりmRNAが細胞内に入ると、スパイクタンパクとレプリカーゼが生成されます。細胞内でレプリカーゼがmRNAを増やすことで、スパイクタンパクを増やすことができます。このスパイクタンパクが細胞外に放出されることで抗体が形成されます。このワクチンの利点は、接種後にmRNAが増えることから、必要な注射量が少なくすみ、その結果副作用が少なくなる、接種後抗体価が低下しにくいなどの可能性があると考えられています。しかし、副反応については未知の部分が多く、これまでの接種経験がないため注意が必要です。
レプリコンワクチンでは「シェディング」という概念も取り沙汰されていますが、これはワクチン接種を受けた人から未接種者にウイルスのmRNAが伝播するというものです。しかし、このワクチンはウイルスのmRNA全体を含むのではなく、スパイクタンパクの遺伝子のみです。また、mRNAは非常に分解されやすい性質を持ちます。(当初、ファイザーのワクチンが-70℃保存を必要としたのはこのためです。)したがって、私はシェディングが起こることはないと考えます。
さらに新型コロナワクチンについて知りたい方はこちらをご覧ください。
新型コロナワクチンQ&A https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_qa.html