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機能性表示食品の問題 本当に効果があるのか?

前回、健康食品のさまざまな問題について紹介しました。今回は、機能性表示食品が実際に表示通りの効果があるのかを考察します。

日本で錠剤型やカプセル型のサプリメントが認められたのは1990年代のことです。その後、健康に関する表示が可能になったのが「特定保健用食品」、通称「トクホ」です。トクホには、成分が特定されていること、安全性の証明、人を対象とした研究論文が必要となります。それをもとに国が審査、承認します。つまり、トクホは専門家のお墨付きがある商品です。しかし、トクホの取得には数億円の費用がかかるとも言われ、企業にとっては負担が大きいのが現実です。

このため、機能性表示食品制度が創設されました。機能性表示食品は、商品に含まれる成分の効果が科学的に証明されている論文があれば、それが自社での研究論文でなくても、国の審査を受けずに表示ができるという制度です。ただし、専門家の審査を経ないため、リスクも伴います。

このリスクを指摘したのが、京都大学のSomekoらによる研究です。彼らは、機能性表示食品の申請に使われた研究論文やプレスリリース、広告を調査し、情報操作(spin)が行われていないかを確認しました。
spinとは、以下のような情報操作を指します:
1)研究結果の表現や解釈がゆがめられている。
2)結果と解釈が一致しておらず、解釈が良好であってもデータが伴っていない。
3)試験デザインから因果関係を導き出せない。
4)結果の過剰解釈や不適切な外挿がある。

例えば、研究結果にて本来の有効性が証明されていないのに、副次的な項目で差が出たことを強調したり、統計的に有意差がないのに効果があったかのように記載するなどがあります。Somekoらの研究では、合計76件のRCT(ランダム化比較試験)登録、32件のRCT出版物、11件のプレスリリースや広告を分析し、以下のような結果が得られました:
抄録の結果に72%、抄録の結論に81%、全文の結果に44%、全文の結論に84%にspinが見られました。プレスリリースや広告の73%にもspinが確認されました。

つまり、機能性表示食品に使われた論文の結果は過大に評価されていることが多いのです。朝日新聞によれば、32本の論文のうち18本が特定の医療専門誌に掲載され、その17本に問題があったとされています。企業側が研究費や論文掲載費を負担するため、その雑誌側の査読が甘くなっていた可能性もあります。あらかじめ専門家が論文を適切に評価するシステムならば、このような問題は回避できたのではないでしょうか?週刊文春でもこの問題が記事になっていました。(2024年9月12日号)

一般の方が機能性食品を摂取する際に、その研究論文を検証することなどできません。つまり、もともと機能性食品制度は企業向けに創設されたものであり、国民の健康増進を目的としたものではないのです。

参考文献
Hidehiro Someko et al. Misleading presentations in functional food trials led by contract research organizations were frequently observed in Japan: meta-epidemiological study. J Clin Epidemiol. 2024 May:169:111302. PMID: 38417584 DOI: 10.1016/j.jclinepi.2024.111302(https://www.jclinepi.com/article/S0895-4356(24)00057-X/fulltext)