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- 2024.06.13
- CATEGORY先生のへや
SNSで情報収集する時の落とし穴:エコーチェンバーとフィルターバブル
最近では、Googleなどの検索エンジンではなく、SNSを通じて情報収集する人が増えてきています。SNSとは、InstagramやFacebookなどのネット上のコミュニティで情報をやり取りするシステムです。SNSには情報の偏りを生む2つの問題、エコーチェンバー(Echo Chamber)とフィルターバブル(Filter Bubble)について解説します。SNSには特有の問題があり、そのまま情報を受け取ってしまうと気がつかないうちに情報が偏ってしまうことになります。
1. エコーチェンバー:同じ意見ばかりの閉鎖空間 SNSでは、同じような興味を持つ人同士が繋がりやすく、結果的に同じような情報ばかり目にすることになります。自分の意見を発信すると、共感してくれる人が多く、それがさらに同じ意見を増幅させてしまいます。エコーチェンバーの中にいると、自分と違う考え方や価値観の違う人と交流する機会を失ってしまうため、結果的に自分と異なる視点からの意見を知ることができなかったり、誤った情報を修正する機会が失われることもあります。これは「エコーチェンバー」と呼ばれる現象です(下図参照)。例を示しましょう。一部の人の間では糖質制限食が話題となっています。もしあなたが、糖質制限を推奨する人たちのSNSに参加すれば、糖質制限食のデメリットに触れる機会が減少し、それこそが糖尿病の食事療法の全てであると思いこんでしまうかもしれません。確かに最新の糖尿病診療ガイドライン2024では、「2型糖尿病の血糖コントロールのために、6~12ヶ月以内の短期間であれば炭水化物制限は有効である」と変わってきています。ただし、これを裏返して解釈すれば、長期の炭水化物制限の有効性安全性はまだ確立していないとも言えるのです。

2. フィルターバブル:あなただけの情報空間 SNSや他のウェブサイトには、ユーザーの興味関心を推測し、その情報を優先的に表示するシステムが備わっています。インターネット検索、ニュースフィード、オンライン広告、動画配信等では、パーソナライゼーション(Parsonalization)技術が発達しています。サイトを利用している各ユーザーの過去の検索歴、クリック履歴、プロフィール、投稿内容、位置情報などの情報をフィードバックし、個人の特徴をアルゴリズムによって推測し、カスタマイズできるようになっているのです。みなさんがYouTubeを見たときを思い出してみてください。猫の動画を見ていると、次から次に同じような猫動画が出てきませんか?偏った健康・医療情報を見ているうち、それに似た情報ばかりが表示され、あたかもそれが主流であるかのように勘違いしかねません。

情報の偏りを避けるためには、このような問題があることを念頭に「自分の接する情報が偏っていないか?」「それと相反する情報はないのか?」などあえて意識しつつSNSを利用することが重要です。
参考文献:笹原和俊「フェイクニュースを科学する」化学同人2018年、山口真一「ソーシャルメディア解体全書」勁草書房2022年
2015年神戸で私が講演した記録がYouTubeに掲載されています。「危ない健康情報を見分けるコツ ニセ科学に騙されないで!!」(https://www.youtube.com/watch?v=y6C9Vs63R9I)参考にしてください。