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健康本の信頼性

先日ある患者さんからある本を見せられました。患者さんによると、そこに書かれているサプリメントが糖尿病やダイエットに良いとのことでそれを購入したいのだが、その商品名が書いていないとのことです。巻末を見るとそのサプリメントについての問い合わせ先が掲載されていました。

これはバイブル本商法と呼ばれるサプリメントや代替医療の宣伝方法です。その効果が科学的に証明されているサプリメントであれば、特定保健用食品または機能性表示食品の表示があるはずです。特定保健用食品(トクホ)は当該の商品を用いた研究でその効果が科学的に証明されている場合、機能性食品はその商品に含まれる成分の効果が論文として発表されている場合に表示することができます。トクホや機能性表示食品の表示がない商品は、その効果が科学的に証明されていないといえます。そのため、サプリメントの効果を宣伝に乗せるかわりに、バイブル本商法という方法が取られます。

バイブル本商法は、そのサプリメントを摂取したら効果があったとの体験談をいくつも載せ、それを専門家らしき人が解説し、それを本にまとめて出版するという宣伝方法です。かつてはその広告を大手新聞に掲載し、お墨付きがあるかのように装ったこともあります。本の中には商品名は掲載されていません。商品を購入したい人は、巻末の問い合わせ先に連絡します。そこでセールスが開始され、その商品を購入するようにすすめられます。

最近、健康本の情報の質を日米間で比較した研究が論文として発表されました。(Oono F, Adachi R, Yaegashi A, et al. Are popular books about diet and health written based on scientific evidence? A comparison of citations between the USA and Japan. Public Health Nutrition. 2023:1-11. doi:10.1017/S1368980023002549)この研究では、日米の人気の健康本各100冊ずつを選び、その引用文献、学術論文、人を対象としたシステマティックレビュー(複数の学術論文を調べ、その内容を統計的に評価し、要約した論文のこと。科学的信頼性が高いとされています。)の数および引用文献の特定可能異性、著者の医療関連資格について調べています。日米ともに約65%の書籍が文献を引用していましたが、学術論文を引用していたのは日本で31%、米国で58%でした。人を対象とした学術論文の引用では、それぞれ29%、58%でした。日本の書籍では米国のものに比べ引用文献がはるかに少なかったのです。日本で人気のある健康本であっても、米国の本に比べその科学的根拠をしっかり示せていないことが明らかとなりました。
 書籍になっているとその内容をそのまま信用してしまいがちですが、裏付ける学術論文、特に人を対象とした論文が引用されているかどうか、確認しましょう。体験談だけを信用してはいけません。