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糖尿病と高血圧症

糖尿病の方ではその血圧管理が厳しくなります。一般に血圧が140/90を超えると高血圧症ですが、糖尿病の方の場合降圧目標は130/80未満に引き下げられます。その理由は、糖尿病、高血圧症の両者が動脈硬化のリスク因子であるばかりでなく、高血圧症が糖尿病性腎臓病の悪化させる要因となっているからです。

血圧の高い方に薬が必要であると話すと、「一旦降圧剤を飲み始めるとずっと飲み続けなければならないのか?」などと言って薬を服用したがらない方もいます。高血圧治療に関して多くの誤解があるようです。以前ある週刊誌で降圧剤の問題について取り上げ、その記事の中で降圧剤を服用したら脳梗塞を発症したというエピソードが紹介されていました。降圧剤により血圧が下がっただけで脳梗塞を発症することはまずありません。すでに細くなっていた血管が過度な降圧により詰まってしまったという可能性は否定できませんが。例えば、若い痩せ型の女性の場合、血圧が90/60程度の低い方も多くいらっしゃいますが、そのような方で脳梗塞を発症する人はいませんよね。血圧が下がっただけで脳梗塞になるわけではないのです。

私が推測するに、週刊誌で紹介された方は、以前から血圧が高かったのだと思います。長い間高血圧が続くと脳の細い血管が徐々に狭くなり詰まって脳梗塞を発症します。これはラクナ梗塞と呼ばれます。ラクナ梗塞の最も重大なリクス因子は高血圧なのです。その方はもっと早くから血圧治療をしていればこのようなことにならなかったかもしれませんし、ゆっくり血圧を下げることで脳梗塞を避けられたかもしれません。このような特殊な事例を紹介し、降圧剤を批判することは極めて非科学的であると私は考えます。

脳卒中治療ガイドライン2021(2023年改定)には、血圧が高いほど脳卒中および心血管系イベントの発症率が高くなるため、脳卒中発症予防のため高血圧患者では降圧治療を行うよう進められる(推奨度A、エビデンスレベル高)と書かれています。また、脳梗塞の発症予防には、降圧療法が進められる(推奨度A、エビデンスレベル高)とあります。これらの内容は臨床研究で裏付けられています。もちろん生活習慣の改善や減塩、野菜や果物の積極的な摂取などで血圧が下がるのであれば降圧剤は必要ありません。ただし、それでも血圧が適正に保てないのであれば、降圧剤を服用したほうが良いでしょう。

なぜ降圧剤を継続的に服用しなければならないのか?その理由は、降圧剤は高血圧を治す薬ではなく、血圧を下げるだけの薬であるからです。高血圧症が治る薬であれば途中で中止することも可能でしょうが、服用している間しか血圧を下げられないのであれば、将来の脳卒中予防のため継続的に服用することが必要です。降圧剤服用がなぜ必要なのか担当医とよく相談することをおすすめします。