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- 2023.08.17
- CATEGORY先生のへや
インフォームドコンセント(Informed Consent、説明と同意)とインフォームドチョイス(Informed Choice、説明に基づいた決定)
医療においては、診断や治療に関して、医師と患者さんのコミュニケーションが非常に重要です。医療に詳しい医療者は、知識が不足している患者さんに対して正確な医療情報を伝え、それを患者さんが理解し、医療を受けることが望ましいのですが、医療は複雑であり、それが難しい側面もあります。医師と患者さんがコミュニケーションを取る方法として、インフォームドコンセント(Informed Consent、説明と同意)、インフォームドチョイス(Informed Choice、説明に基づいた決定)、シェアードディシジョンメイキング(Shared decision Making、共有意思決定)があります。
インフォームドコンセントの意味については、国立国語研究所の「病院の言葉」というサイトに分かりやすい説明があります。インフォームドコンセントは、「治療法などについて,医師から十分な説明を受けた上で,患者が正しく理解し納得して,同意することです」。一方で、インフォームドチョイスという言葉もあります。これは、「説明を受けた上で選択すること」という意味で、医療者が病気や検査、治療などについて複数の選択肢を提示し、患者さん自身が自分に適したものを選ぶという意味です。
これらの使い分けについて、糖尿病を例に考えてみましょう。
糖尿病が悪化し、喉が渇いたりトイレが近くなり、疲れやすくて動けなくなってしまいます。これはかなり糖尿病が悪くなった状態であり、血糖値が500mg/dl以上になっていると推測されます。このような状態は急性代謝失調とも呼ばれます。このような状態では、治療が遅れると高浸透圧性高血糖状態となり昏睡状態に陥るリスクがあるため、直ちに輸液やインスリンの投与が必要です。時には緊急入院も考慮されます。この場合、緊急性が要求され、治療の選択肢も限られるので、医師主導の治療が必要です。そのため、医師が現在の病状や必要な治療について説明し、それに患者さんに納得してもらわなければなりません。この場合の手法はインフォームドコンセントです。
一方、血糖コントロールが徐々に悪化し、経口薬だけでは治療が難しい場合は、インスリン治療が必要となります。もちろん、この場合もインフォームドコンセントにより、患者さんにインスリン治療の必要性を納得してもらう必要があります。しかし、高齢の方(例えば90歳以上)の場合はどうでしょうか?高齢者がインスリン注射の手技を覚えることや、インスリン量を調節することは難しいかもしれません。個人差もありますが、認知症の初期だったり、麻痺があって注射ができない場合もあります。このような場合は、インスリン注射を行うべきかどうか、そのベネフィットとリスクを説明し、患者さんやその家族に判断を委ねることもあります。これがインフォームドチョイスの考え方です。