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- 2026.03.16
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塩分制限(減塩)について

ある人が「『塩を摂ると血管がぶち切れるぞ』と国民を洗脳する“昭和医師”」と表現していました。しかし、実際にそのような言い方をする医師はほとんどいません。このような強い表現のタイトルは、あくまで注目を集めるためのものと考えてよいでしょう。
その人は、「減塩すると死亡率が上昇するという論文が、有名な医学雑誌 New England Journal of Medicineに掲載された」と主張しています。確かに、一部の研究では、極端な塩分制限、たとえば1日2g以下の摂取では、死亡率が上昇する可能性があると報告されています。ただし、これらは主に観察研究であり、解釈には注意が必要です。観察研究では、「原因と結果が逆ではないか」「他の要因(交絡因子)が影響していないか」といった点を慎重に検討する必要があります。
一方で、同じ New England Journal of Medicine に掲載された別の論文
「Dietary Sodium and Cardiovascular Disease Risk — Measurement Matters(食事のナトリウム摂取量と心血管疾患リスク ― 測定の重要性)」(N Engl J Med. 2016 Aug 11; 375(6):580–586)では、次のように述べられています。
多くの研究は、減塩による血圧低下と心血管疾患(CVD)予防効果を支持しています。一方で、「塩分を控えすぎると、死亡率やCVD(脳卒中や虚血性心疾患など)のリスクが上昇する(J字型・U字型曲線)」とする研究も一部に存在します。しかし、こうした「低ナトリウム摂取によるリスク増加」を示す研究には、測定方法などに問題(バイアス)があると指摘されています。
この論文では、低ナトリウム摂取が有害に見えてしまう理由として、以下の点を挙げています。
- 逆の因果関係
すでに糖尿病や慢性疾患を持つ人は、食事量が減ったり食事療法を行ったりするため、結果としてナトリウム摂取量が低くなりがちです。つまり、「減塩が病気を招いた」のではなく、「病気があるために摂取量が低い」可能性があります。 - 不正確な測定方法
多くの研究では簡便な「スポット尿(随時尿)」による測定が用いられていますが、これは個人の長期的なナトリウム摂取量を正確に反映しないことがあります。 - ゴールドスタンダードによる評価
正確な評価には、「非連続の24時間蓄尿を複数回行う」方法が必要です。この厳密な方法を用いた TOHP試験などでは、ナトリウム摂取量とCVDリスクの間に、摂取量が多いほどリスクが高くなる正の直線関係が確認されています。
日本の研究として、塩分摂取量と死亡率の関係を調べたNIPPON DATA80があります。この研究では、1000kcalあたりの食塩摂取量が2g多いごとに、その後24年間の総死亡が7%、循環器病死亡が11%、冠動脈疾患死亡が25%、脳卒中死亡が12%増加することが示されました。
塩分摂取量が4.9g未満のグループを1とすると、7.2g以上摂取した場合、総死亡は1.08倍、循環器疾患死亡は1.17倍、冠動脈疾患死亡は1.49倍、脳卒中死亡は1.39倍と、塩分摂取量が多いほど死亡率が高いことが明らかになっています。
(Hypertens Res. 2020 Feb;43(2):132–139)https://www.nature.com/articles/s41440-019-0349-9
このように、世界中の多くの研究から、塩分摂取量が増えると血圧が上昇し、心血管疾患による死亡率も高くなることが一貫して示されています。昨年発表された高血圧症ガイドラインでも、複数の研究をもとに、1日の塩分摂取量を6g未満にすることが推奨されています。
また、令和3・4年度に実施された「県民健康・栄養調査」によると、群馬県民の1日あたりの塩分摂取量は、男性11.0g、女性9.9gと、依然として多い状況です。
健康のためには、令和の時代においても減塩は重要なのです。
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