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新しくなった高血圧症ガイドラインにおける高齢者の治療目標は?

高血圧症のガイドラインが改定されました。今回、特に話題となったのは、「75歳以上の高齢者でも、元気な方であれば血圧を130/80mmHg未満」に下げることを目標とするとされた点です。
これまで、75歳以上の高齢者では目標血圧は140/90mmHg未満とされていました。
ガイドラインでは、75歳以上を「高齢者」として別に項目を設けています。高齢者の血圧には、

  • 血管が硬くなることで上の血圧(収縮期血圧)が高くなりやすい
  • 血圧の変動が大きい
  • 心臓や腎臓の病気を合併しやすい
  • 薬の副作用が出やすい
    といった特徴があります。

また、75歳以上といっても、非常に元気な方から、複数の病気を抱え筋力や体力が低下している方まで、その状態はさまざまです。
今回示された130/80mmHg未満という目標は、あくまで元気な高齢者を対象としたものです。体力や筋力が低下している方では、140mmHg未満や150mmHg未満など、一人ひとりの状態に応じて目標血圧を設定することが求められています。
つまり、すべての高齢者に一律で130mmHg未満を目指すわけではありません。
目標血圧が厳しくなると、治療の対象となる人が増えるため、「ガイドラインを作っている医師たちが製薬会社からお金をもらい、患者数や薬の使用を増やして製薬会社を儲けさせようとしているのではないか」といった意見が必ず出てきます。
しかし、ガイドラインの作成には厳密なルールがあります。降圧目標については、科学的根拠(エビデンス)を明確に示し、説明できなければなりません。作成者の個人的な考えが入り込む余地はほとんどありません。
実際にガイドラインでは、収縮期血圧を130mmHg未満に下げた人は、それより高い血圧を維持した人と比べて、

  • 心臓や脳の病気をまとめた「複合心血管イベント」が49%減少
  • 全死亡が28%減少
  • 脳・心血管による死亡が45%減少

したというメタ解析(複数の研究をまとめて解析したもの)の結果が示されています。しかも、この場合、副作用などの有害事象が増えることはありませんでした
このため、元気な75歳以上の高齢者では、目標血圧が130/80mmHg未満とされたのです。
現在、降圧薬の多くは安価なジェネリック医薬品となっています。そのため、たとえ降圧薬の処方が増えても、大手製薬会社にとっての利益はほとんどありません。
また、医療機関でも、薬の多くは院外処方であり、かつてのように薬の仕入れ値と薬価の差で利益を得る「薬価差益」もほぼありません。
ガイドラインでは、さらに血圧を下げる方法として、サイアザイド系利尿薬の使用を勧めています。塩分摂取量が多い人では、少量の利尿薬でも血圧が下がりやすいためです。この薬のジェネリックは1錠6.4円で、30日分でも192円、3割負担では約58円にすぎません。
海外の状況を見ても、日本だけが厳しい目標を掲げているわけではありません。
ヨーロッパの高血圧ガイドライン(2024年)では、85歳以上は別扱いとし、85歳未満の目標血圧は120~129/70~79mmHgとされています。
また、米国の最新の高血圧ガイドライン(2025年)でも130/80mmHg未満を基本目標とし、心血管疾患のリスクが高い人や糖尿病を持つ人では、120mmHg未満を推奨しています。米国では高齢者だけを特別に分けるのではなく、合併症など個々の状況に応じた目標設定が行われています。
このように、日本のガイドラインだけが特別に厳しい基準を設けているわけではありません。
ガイドライン作成者が恣意的に降圧目標を下げた、という主張は事実とは言えないのです。